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「優先順位づけの“癖”に気づけていない」── 大手通信インフラ企業が3年続ける次期サブリーダー向けインバスケット研修事例

新任管理職研修を行う目的・実施すべきケース・具体的な方法

「人事評価制度を絶対評価へ移行した。でも、管理職が新しい 制度に馴染んだ目標設定ができるようになっていない」──。

「一人称の仕事はできる。でも、チームとして意思決定していく経験がまだ足りていない」──

国内の大手通信グループに属し、社会インフラ設備の運用・維持管理を手掛ける企業(以下、B社)は、入社5年目社員──今後サブリーダーとして活躍が期待される層に対し、こうした課題を抱えていました。

株式会社キャリアリーダーシップラボでは、この課題に対し、個人インバスケット演習とグループインバスケット演習の2段階構成による1日研修を設計・実施し、B社では3年連続でこの研修を継続いただいています。本記事では、「一人称の仕事からチームでの仕事へ」という節目に着目したプログラム設計の考え方と、優先順位づけの“癖”に気づかせる具体的な演習の中身、受講者からのフィードバックまでを、実施担当の森田の解説をもとにご紹介します。

次世代リーダーの育成をお考えならキャリアリーダーシップラボへ

キャリアリーダーシップラボは、「自律した個人が強い組織を作る」というビジョンのもと、個人と組織の成長を支援しています。

京都を拠点に、20年間で累計2,000回以上の研修を実施し、多くの企業の課題解決に貢献してまいりました。組織の課題は企業ごとに異なります。細やかなヒアリングを通じてニーズを把握し、企業に合わせたプログラムを設計します。

対面・オンライン・ハイブリッドのいずれにも柔軟に対応可能です。新任リーダーの育成や組織力強化をご検討の際は、キャリアリーダーシップラボまでご相談ください。

研修実施の背景 「一人称の仕事」から「チームでの意思決定」への転換点

新任管理職に求められる役割・管理職研修の目的とは?

B社がインバスケット研修を導入した直接のきっかけは、対象となる入社5年目社員が置かれているキャリアの転換点にありました。

これまでは自分自身の業務を着実にこなす「一人称の仕事」が中心だった層が、今後はサブリーダーとしてチームを率い、チームとしての仕事・判断が求められる立場に移行していきます。この移行にあたり、Bでは次のような課題感を持っていました。

  意思決定の経験が、実務の中でまだ十分に積めていない
•  優先順位づけが感覚的で、判断基準が本人の中で言語化されていない
•  昇格アセスメントに向けて、実務に近い形で判断力を測り、鍛える機会が不足している

こうした課題に対応するため、B社では入社5年目社員を対象に、インバスケット演習を軸とした1日研修を導入し、3年にわたり継続して実施しています。

 

お取引の経緯 ── 3年続けての継続実施

B社と当社の関係は、単発の研修委託ではありません。

3年続けて実施させていただいている研修です。毎年同じ5年目社員という層を対象にしているので、内容自体は大きくぶれさせず、講師として現場の反応や理解度を見ながら、解説の重み付けなどを微調整しています。」 ── 森田

継続して同じ対象層・同じテーマで実施しているからこそ、当社側にもB社の組織風土や、受講者である5年目社員が抱えやすいつまずきのパターンについての理解が蓄積されており、それが年々の研修の精度向上につながっています。

研修プログラムの設計 ─個人インバスケット × グループインバスケットの2段階構成

項目 内容
対象者 B社 入社5年目社員(次期サブリーダー候補)
受講者数 例年1520
実施時間 9:00~17:30 (1日研修)
担当講師 当社:森田(1名で担当)
実施形式 対面実施

1520名という比較的少人数での実施は、後述するグループインバスケット演習において、部門間の利害調整を一人ひとりが「自分ごと」として体感できる密度を保つための設計です。

研修の中核テーマ──「意思決定の疑似体験を通じて、優先順位付けの”癖”に気づく」 

今回の研修の最大のテーマは、意思決定・優先順位づけの疑似体験です。

管理職として着任した設定のもと、限られた時間の中で未処理案件に対する判断・指示を行うインバスケット演習を通じて、受講者自身がふだん無意識に行っている優先順位づけの基準や思考の癖を、客観的に自覚できる状態をつくることを目指しています。

演習で重視する「4つの観点」

研修のキーメッセージとして、受講者が演習を通じて確認すべき4つの観点を明示しています。

1. 重要度の捉え方 ── 何をもって「重要」と判断するのか、その基準を自分の言葉で言語化する。
2. 重要度と緊急度の関係性 ── 混同されがちな2つの軸を切り分け、緊急度だけに引っ張られない判断をできるようにする。
3. 判断における個人の思考の癖 ── 無意識に生じている優先順位づけの偏りに気づく。
4. 部門を超えた全社最適の視点 ── 部門の利益代表という立場に立ちながらも、各部門の共通利害の枠組みで考えられるか。

特に13は個人インバスケット演習で、4はグループインバスケット演習で重点的に扱っています。これらは単なる演習後の感想にとどめず、受講者本人が「自分はこう判断する癖がある」と自覚することを狙いとした、育成のための観点です。

ワークは2段階のインバスケット演習で構成

1日研修の中で、演習は個人インバスケット演習とグループインバスケット演習の2本立てで設計しています。

段階 内容 ねらい  
個人インバスケット演習 管理職として着任した設定のもと、60分間で未処理案件に対する判断・指示を行う。その後、講師によるポイント解説を実施。 一人称的な思考の癖と、自分自身の重要度判断の基準を自覚する  
グループインバスケット演習 各受講者が各部門の管理職役割を担い、部門の利益代表の立場からグループ討議を行う。その後、講師によるポイント解説を実施。 部門間の利害対立を体感しつつ、共通利害の枠組みで全社最適を導く視点を養う  

進め方の流れは、

個人ワーク(60分)グループ討議ポイント解説

という一連の流れを2演習分繰り返す構成です。個人としての判断の癖に気づいた上で、グループでの利害調整という一段階上の意思決定に取り組むことで、「一人称の仕事」から「チームでの仕事」への橋渡しを演習として体験できるようにしています。

インバスケットを「アセスメント」ではなく「育成」の手段として使う

新任管理職研修が向いているケース

インバスケット演習は昇格判定のアセスメントとして使われることも少なくありません。しかし、B社での研修は、あえてそこに主眼を置いていません。

「インバスケット演習をアセスメント、つまり昇格の可否を判定するための材料にするのではなく、育成の手段として用いることがポイントです。」 ── 森田

演習を通じて「できる/できない」を評価するのではなく、受講者自身が現時点での自分の発揮能力(実力)に気づき、そこから行動変容につなげていくことに重きを置いています。この位置づけの違いが、受講者の受け止め方や研修後の実践意欲にも大きく影響しています。

実施後のフィードバック ── 納品する「実施報告」の形

研修の価値は、当日の演習時間だけで決まるわけではありません。B社のケースでは、研修終了後に実施報告として振り返りを納品しています。当日のグループ討議内容と、アンケートの回答結果をもとに、受講者全体の傾向・理解度・啓発された点をまとめてレポーティングしています。
 

受講者からの声(一部抜粋)
・重要度などについては業務でもよく使うため、活用できる
・ 工事調整業務においてお互いの利害調整の活用場面が多いため、明日から業務で実践したいと思います
・業務で優先順位づけに困ることが多く、活用できると思ったから
・タスクマネジメントや対立解消のポイントについて新しい学びがたくさんあった
・グループワークや実践もあり、実践に落とし込みやすい
・自分の今の状況が明確になり、業務にすぐつながるワークであったため大変有意義であった

この事例から見えること知識付与型」から「体験型」へ

今回のB社事例を、他社の昇格前研修・アセスメント研修の取り組みと並べて見ると、単なる制度上の変化ではなく、学習方法そのものの変化が見えてきます。

変化の軸 従来の研修 現在(B社事例での対応)  
学習の中心 優先順位づけの考え方をインプットする 実際に思考・行動する疑似体験を通じて学ぶ  
気づきの質 一般論としての理解にとどまりやすい 自分自身の発揮能力(実力)と思考の癖が明確になる  
研修の位置づけ 昇格可否を判定するアセスメント 自己理解と行動変容につなげる育成の機会  
アウトプット(体験)型へのシフト

体験型は、実際に思考・行動を行うことで、受講者自身の現在の発揮能力(実力)が明確になり、自己理解と行動変容につながりやすいという特徴があります。これは、B社事例に限らず、昇格前研修全体に見られる共通の変化だと捉えています。

まとめ「一皮むける」機会としてのインバスケット研修

  大手通信インフラ企業の入社5年目社員(例年1520名)に対し、インバスケット研修を1日・対面で実施し、3年連続で継続。

  個人インバスケット演習グループインバスケット演習という2段階構成により、「優先順位づけの癖への気づき」から「全社最適の視点」までを段階的に養う。

  インバスケット演習をアセスメントではなく育成の手段として位置づけている点が特徴。

  納品は実施報告として、当日のグループ討議内容とアンケート結果から、受講者全体の傾向・理解度・啓発点を取りまとめて提供。

「一人称の仕事はできるが、チームとしての意思決定はまだ未経験」──。こうした段階にいる人材は、多くの企業に存在します。今回の事例で示したのは、限られた受講者数・1日という制約の中でも、疑似体験を通じて自分の判断の癖に気づかせる設計ができれば、昇格前の「一皮むける」機会として十分に機能するということです。

次期リーダー層の育成は、「知識を教える」ことではなく、「本人に気づかせる」ことが鍵になります。B社のような形で、如何に一人称の仕事からチームでの意思決定へと橋渡していくのか。今後も、こうした事例を積み重ねて発信していきたいと思います。

著者プロフィール

森田(株式会社キャリアリーダーシップラボ 代表取締役) 長年、大手企業を中心に評価者研修・キャリアデザイン研修・マネジメントコーチングを提供。特に大手通信グループ企業・大手ハウスメーカー企業など、毎年継続的に依頼を受けるクライアントを複数抱え、150名クラスの大規模研修も1名で設計・実施してきた実績を持つ。

管理職に向けた研修ならキャリアリーダーシップラボへ

名称 株式会社キャリアリーダーシップラボ
代表者 代表取締役 森田 祐司(もりたゆうじ)
中小企業診断士/2級キャリアコンサルティング技能士
オフィス 〒600-8099 
京都府京都市下京区仏光寺通烏丸東入上柳町331 タカノハスクエア4F
お問合せメール y.morita@careerleadership.jp
代表番号 050-1809-0258
主なサービス 人材開発、キャリア開発、組織開発に関するコンサルティング、企業研修
URL https://careerleadership.jp/

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