管理職の「立候補制」は組織を救うか?

管理職

「管理職は罰ゲーム」という時代の到来

かつて管理職は、ビジネスパーソンが目指すべき「ゴール」でした。しかし今、その風景は一変しています。働く側、特に中堅・若手社員の間で「管理職は罰ゲーム」と称されるほど、管理職への就任を忌避する動きが広がっています。

この状況に対抗する動きとして「管理職の立候補制」を導入・拡大する企業が増えています。SOMPOホールディングスはその先駆けとして、2021年度からおよそ20の部長職について立候補制を取り、さらにこれをおよそ60の課長職にも拡大しました。

このような動きは、「誰が管理職になるか」という問いへの答えを、組織が一方的に決める時代から、個人が主体的に選ぶ時代へのパラダイムシフトを象徴しています。

なぜ今、立候補制が注目されるのか

かつて管理職は昇進・栄達の証とされ、男性会社員が当たり前のように目指すべきポジションとみなされていました。ところが現在では、責任ばかりが重く、権限や裁量は限られ、むしろ「誰もやりたがらない役回り」として敬遠される傾向が広がっています。

グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2025によると、リーダーの71%がストレスの増加を訴え、そのうちの40%がリーダー職から離れることを考えています。さらにCHROの77%が重要な役割を担う人材の供給体制に自信を持てていません。

従来の「指名・命令型」の管理職任用は、本人の意欲や適性を無視したまま「ポストの穴を埋める」ための人事になりがちでした。その結果、やらされ感を抱えた管理職が増え、チームのパフォーマンスもエンゲージメントも低下していくという悪循環が生まれています。立候補制は、この悪循環を断ち切るための一手として期待されています。

立候補制がもたらすメリット

①主体性と意欲の醸成です。無理やり管理職をやらされている人より、前向きに管理職に取り組んでいる人の方が、部下からしても働きやすいのは当然です。 立候補した人材は「選ばれた」のではなく「選んだ」という意識を持ち、責任感と覚悟が伴います。

②多様なリーダー像の実現です。年功序列や上司の好みによる指名ではなく、自らの強みを活かしたいと思う多様な人材が名乗りを上げることで、組織に新しいチームのかたちが生まれます。

③キャリア自律の促進です。立候補するという行為そのものが、自身のキャリアを主体的に考えるきっかけになります。たとえ不採用であっても、「自分はなぜ管理職を目指したいのか」という問いと向き合うことで、個人のキャリアの解像度が上がっていきます。

立候補制のリスク

立候補者の中から誰がどのような基準で誰を選ぶのかという明確な指針がなければ、声が大きい人だけが管理職になるという状況になってしまいます。また「なんであの人が」といった陰口が生まれ、組織の分断を招くリスクもあります。さらに、選定基準が明確ではない場合、現場から企業への不信感を募らせてしまうケースもあります。 立候補制は、選抜の透明性と公正性が担保されてはじめて機能する制度です。「立候補できる」という自由と、「選ばれる基準が明確である」という公正さの両輪が揃って初めて、エンゲージメントの向上につながります。

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